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生活は人間を陶冶(とうや)する

 青森県・弘前市にある高校の指導者が既存の下宿をリフォームして完成させた自宅兼硬式野球部寮の居間に「生活は人間を陶冶する」という筆文字が横書きで掲示されている。「普段の生活がその人間自身を作りあげていく」という意味である。

 北海道遠征で、シシャモで有名なむかわ町にある鵡川高校の「三氣塾」を訪ねて、佐藤茂富先生から教わった言葉である。食堂や廊下に毛筆で書かれた迫力ある掲示に感銘を受け、規則正しい日常生活を送ることが人生を切り開くことを学び、弘前市で花を咲かせた。野球部員が保育園を訪問し、玉遊びを体験させる普及活動に重点を置いた。園児たちに野球的な遊びの面白さを訴え、野球人口を増やしているのはお見事である。

 北海道と青森県の交流は各地で行われている。北海道の知内(しりうち)町にある町立知内高校は、山本鉄弥監督の頃に第65回選抜大会〔1993年〕出場経験もあり、道内の強豪校を練習試合の対戦相手に求めていたが、札幌方面への長距離移動や費用負担など悩みは深かった。しかし、ある時期から青森県の下北半島むつ市にある大湊(おおみなと)高校と交流試合を開始した。大湊は27年間、監督を続けられた富岡哲氏〔2007年の第89回選手権青森大会で「育成功労賞」を受賞〕の教え子が監督を受け継ぎ、第91回選手権青森大会〔2009年〕と第98回選手権青森大会〔2016年〕で準優勝に輝いた。知内は、恵庭北高校・本間茂裕校長が定年退職後、2015年に監督就任、さらに2016年に本間氏が教育長に就任されてからは、若い吉川英昭監督が大湊や青森北高校との交流試合を広げて、逆に遠征チームを知内に迎えることで、費用負担も大幅に軽減され、メキメキ力をつけて、全道大会出場回数も増えた。指導者同士の交流も盛んで、実に嬉しい限りである。

 雪が消えてもなお、しばらく土の上で部活動ができず、悔しい思いをした北海道・東北の野球部員の皆さんには、代替大会や延期になった交流試合でどうか鬱憤を晴らしていただきたい。

蛭間俊之