B l o g おもれいブログ

直球の先にある夢

 1992年の第74回選手権大会で、松井秀喜選手〔星稜〕以上に話題をさらったのが、佐賀県立佐賀東に逆転勝ちされた秋田県立能代の胸マークがとても鮮やかで、筆記体のNoshiroがイエローでブルーの刺繍を採用したオリックスそっくりのユニフォームだった。

 秋田県の能代球場〔両翼98m、中堅122m〕の愛称が2007年に「山田久志サブマリンスタジアム」になったのは、能代市・斉藤滋宣市長が「スポーツで街を盛り立ててください。」と、初対面からいきなり山田久志さん〔秋田県立能代→富士製鐵釜石→阪急〕を直球で攻めてきたことに始まるという。「努力すれば夢がかなうことを子どもたちに伝えたい」とボールを投げられたのである。

 球場の一画には、2009年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で投手コーチを務めた際のユニフォームなどが並んでいるという。実は、所用で伊丹空港からANA便に乗り、羽田空港に向かったある日に、偶然にも山田さんと席が前後し、お渡しした北海道の高校野球の新聞記事のコピーを熱心に読んでくださった。短い時間だったが、「ちょうど良かった。今夜に能代でWBCコーチ就任の激励会があるから、この資料を渡しておきますよ」と、笑顔で羽田から秋田の空港行きの便に乗りかえられた。その夜には、監督経験豊かな能代OBの国語の先生から「山田さんに会ったでしょう。北海道の資料を戴きましたよ」と嬉しそうな声で電話があったことも記憶している。フェアプレーで有名な秋田県のチームが全国優勝される日も期待できると思う。相変わらず元気な解説をされる山田さんとの再会を楽しみに待ちたい。

蛭間俊之